レッスンのお仕事で出会う中学生、高校生の方からいただく質問ベストスリーに入ると思う、この質問。
速いタンギングってどうやったらできるようになりますか?
レッスンをしていると「速いタンギングができません」という質問をよく受けます。
まずはその子のタンギングの様子をみるために「ちょっとやってみて」と言って、てきとうに何か吹いてもらいます。
すると、大体の場合「舌がもつれる」という現象が起きています。
「速いタンギングができない」のと「舌がコントロールできない」のは別物
そもそも「舌がもつれる」とは?
舌の筋力が弱く、テンポに対して舌のコントロールができない状態。
メトロノームに合わせて十六分音符を続けてもらうと、舌が勝手に「たたったたたったたったっ・・・」など不規則なリズムになってしまったりする。
わたし自身、音大生時代に「舌がもつれる」という感覚がわからず、ただただ「速いタンギングができるようになる練習」といわれるようなトレーニングを毎日していました。
けれども一向に上達せず、それどころか悪化していることもしばしば。
練習をはじめてから2年が経っても、タンギングが速くなる気配はまったくありませんでした。
「なにをしても速いタンギングができない」と悩み、音大仲間の友達や周りの人にアドバイスを求めると、決まってこう言われました。
「メトロノームゆっくりから練習してテンポあげていけばいいんだよ!」
その言葉を信じ、ひたすらメトロノームを使ってゆっくりからだんだんとテンポをあげたりしましたが、一向に上達せず。
先生にも呆れられてて正直本当に楽器辞めようかと思い詰めました、、
間違った練習ではタンギングは上達しない
タンギングが悪化の一路をたどっていたわたしが「練習が間違っていたのか」と気付いたのは、音大を卒業して数年経った頃でした。
タンギングの上達はもう諦めるしかないのか、、と思っていた矢先に、ひとつのブログを見つけました。
それはとあるトランペッターさんのブログで、わたしと同様にタンギングが上達しなくて悩んでいるという記事でした。
その記事には「舌がもつれる」と書かれており、まさしくわたしの当時抱えていた症状が書かれていたのです。
そのとき初めて、自分は「速いタンギングができない」のではなく「舌がコントロールできずもつれている」んだと気付きました。
舌はたくさんの筋肉でできている
「舌」というものは、見た目は一枚の肉ですが、実はたくさんの筋肉が集まってできており、それぞれが言葉の発音や食べる、飲むなどの運動に欠かせない役割を担っています。
とはいえ、ふだん楽器を吹く上では「タンギングする」こと以外あまり舌を意識することはないかもしれません。
舌=筋肉、そうです、タンギングを上達させるためには舌の筋トレをすればよいのです。
タンギングの練習と舌の筋トレを兼ねたトレーニング
さてここからが本題です。
トレーニング方法は簡単!
余裕でできるテンポで、タンギングで十六分音符を吹き続ける
それだけ?と思われるかもしれませんが、それだけです。笑
テンポは自由です。
ご自身が十六分音符タンギングを余裕でできるテンポに設定してください。
テンポが速ければいいというわけではありません。
必ず、余裕のあるテンポにしてください。
テンポが決まったら、あとはタンギングで十六分音符を吹き続けるだけです。
このとき、注意するポイントがいくつかあります。
*必ず息を流す(楽器に息を入れる)
→ロングトーンするつもりでしっかり息を入れること
*コントロールできるテンポで正確に
→メトロノームより急いだり遅れたりしないこと
*拍数を長く続けること
→最低8拍は続けること。4拍だけとかだと短いです。
もうちょいいけそう!って思ったら16拍ぐらいやってもOK
*トレーニングは1日15分まで
→舌も筋肉なので、トレーニングしっぱなしだと疲れて凝り固まってしまいます。
どうしてもたくさんトレーニングしたい時は15分ごとに休憩を!
ポイントを押さえながら、決めたテンポで余裕でできるようになったら、メトロノームをひと目盛速くする。
焦らなくて大丈夫です。
丁寧にやれば、数日でも変化がみられると思います。
息は「風」、舌は「旗」のようなイメージ
タンギングという奏法は、スラーやレガートよりも息をたくさん使う奏法です。
風が吹いていないところで旗がなびかないように、息が流れていない状態では舌は速く動いてくれません。
それどころか、舌の筋肉がこわばってしまってどんどん固く動かなくなってしまいます。
そうした悪循環に陥りそうになったときは、また余裕でできるテンポでやり直せば大丈夫。
ちなみにわたしがこのトレーニングを始めた頃は、テンポ40くらいから始めました。
必ず余裕でできるテンポに設定して、「こうやって動くんだよー」って舌に教えてあげてください。
トレーニング初めの頃は切れているか切れていないかぐらいでOK
音の長さは長く。
ロングトーンをするようなつもりで息をいれて、そこに舌で切れ目をいれるようなつもりで。
まるでようかんやゼリーに包丁を入れたときのように、はじめは切れ目がはっきりとわからなくてもよいです。
息をしっかり流して、テンポ通り舌を動かすことを長く続けてください。
タンギングの発音は「トゥトゥトゥ」だけじゃない
発音の種類を変えてみる
トレーニングに慣れてきたら、「ナナナ...」や「ダダダ...」など、いろんな発音を試してみてください。
「ナナナ...」とな行の発音で練習する時は、「舌は突くものではなく、離すもの」と意識すると、やりやすいかもしれません。
音楽の授業や部活などで「タンギングするときはトゥトゥトゥ...」と習った方もおられるかもしれません。
かくいうわたしも、音楽の授業でリコーダーをやった際に「トゥトゥトゥ...」と習ったので、ファゴットでもそのタンギング発音を使っていました。
が、リコーダーと比べてファゴットは抵抗感が強いので、必ずしも「トゥ」で音がならない場合もあります。
というかぶっちゃけ、ひとそれぞれ舌の大きさや長さが違うのに、みんながみんな「トゥ」で上手くいくはずありませんよね?ね?笑
どうしても「トゥ」で鳴りにくい時は、発音を変えてみるのもタンギング上達への近道です。
音域によって使い分けるのもあり
ファゴットは音域によっても抵抗感や吹き心地が違います。
なので、それに合わせてタンギングの発音を使い分けるのもありです。
ちなみにわたしの場合は、
低音域→「ドゥ」など濁点の発音
中高音域→「トゥ」や「ト」など軽い発音
と使い分けています。
個人的におすすめなのは「な行」の発音でトレーニングです。
楽器がないときでも、口で「たたたたたた...」と言い続けているとタンギングが上達すると聞いたことがありますが、わたしはそれも「なななななな...」とな行で言っています。
た行の発音でどうしてもうまくできない場合に、な行でのトレーニングはとっても有効です。
まとめ
*「舌がもつれる=速いタンギングができない」ではない
→舌は筋肉のかたまり。筋トレで強化!
*タンギングは息をたくさん使う奏法
→息が流れないと舌は動かない
*余裕でできるテンポで長く続けられるようになったら自然とタンギングは速くなる
→焦らずこつこつと。
*トゥでうまくいかないときはタンギングの発音を変えてみる
→タンギングは一種類なんて誰が決めた?
ここまで読んでくださった方は、おそらくタンギングに悩みがあってここに来られた方だと思います。
最後にひとつだけ、お伝えしたいことがあります。
上手くなるのに「抜け道」はない、ただし最短距離で上達できる「近道」はある
早く上達したい、すぐ上手くなりたい、という気持ちや焦る気持ちがあるかもしれません。
しかし、上手くなるのに抜け道も裏道もありません。
もしかしたら想像していたよりも時間がかかるかもしれません、ですがこれが「最短距離の近道」です。
藁にもすがる思いで見つけたブログがわたしの気持ちを軽くしてくれたように、このブログが困っている誰かの助けになれば、との思いで書きました。
言葉や表現がわかりにくかったりする部分もあるかもしれません。
疑問や気になったことがあれば、ぜひコメントやcontactから共有してもらえると嬉しいです。
わたしもまだまだ頑張ります!一緒に頑張りましょう!
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